ロルフィングの解説

ロルフィング®︎とは

アメリカ生まれのボディワーク

ロルフィング®はアメリカ生まれの施術で、ボディワークの一つと呼ばれています。

ボディワークの特徴は、特定の症状を改善しようとしない、ということです。一般的な病院での診断や治療は、病名や症状に対処していくことが多いです。ですがボディワークでは、理想的な健康状態を引き出すためにアプローチしていきます。

特にロルフィングにおいては、手や肘などによる手技を使い、からだの組織に持続的な圧をかけたり優しく動かしたりしていきます。このような圧や動きを通じて、クライアントさんはからだの内側に自然と意識を向けていくことになります。

その結果、新しい状態に適応しようとからだが自ら変化を生み出し、張りが減ったり、循環が促進されたりします。からだ自らが起こす変化の手助けをしていくことが大きな特徴です。

姿勢を支える筋膜に働きかける

ロルフィングにおいて着目するからだの組織の一つが、「筋膜」です。筋膜は様々な形をしており、筋肉や骨、神経といった組織を包んでいたり、大きな膜状のシートとしてからだ全体を覆っていたりします。

この図は、筋膜がセーターのように全体を覆っていることをイメージさせてくれます。右下の引っ張りによって、この付近の繊維の方向性が崩れていますね。左肩などを見ると、縦横きれいにそろっているので、比べるとわかりやすいです。

筋膜も同様に、一箇所の引っ張りが他の部分にも影響していくのです。

この筋膜の状態が、姿勢に影響することが近年明らかになってきました

姿勢は骨の位置が基準となり、筋肉や内臓など他の組織がそれに沿って存在しています。ですが、実は全ての組織は筋膜を通じて骨についているので、筋膜の張りや長さが崩れていると、骨の位置が変化し、姿勢も変わってきてしまうのです。

この筋膜に働きかけるために、固有感覚受容器というセンサーを活用します。このセンサーは、張りや長さ、圧、痛みなど様々な情報を感知して、脳に情報を送ってからだの姿勢を調節しています。

また、持続的でゆっくりとした圧に反応することが研究で分かっています。ですので、ロルフィングではセンサーに働きかけるような形で、ゆっくりとした圧を掛けたり、動きを誘導したりすることで、筋膜の状態を整えていきます。その結果、特定の箇所に掛かっていた負担が軽減し、症状や痛みが改善していくのです

重力によって治癒される

筋膜の状態が整うと、骨の位置も理想的なものになり、姿勢が変化します。そこに、重力が掛かってくると、からだにはさらなる変化がもたらされます。

なぜかというと、重力が上から下に流れている地球上において、からだが整っていると「地面方向に向かっている力(青)が上向きの力(赤)に変換され、内側からの広がりが生まれる」からです。

つまり、理想的な姿勢で生活をしていると、この上向きの力が常に掛かっていることになり、緊張や張りのある部位が広がりやすくなっていくのです。重力があるかぎり、自ら自分のからだを治癒していくことになります。

創始者であるアイダ・ロルフ博士は、

からだが適切に働いているとき、からだの中を重力が流れる。すると、からだは自然に自らを癒していく。

アイダ・ロルフ博士

といった言葉を残しています。からだの状態を適切にする、つまり筋膜の状態が整っていると、常に重力がからだの中を通りやすい状態であるので、永続的な広がりが期待できます。

ロルフィングのセッションを受けた数日後に変化を感じたり、発見があったりすることがあるのは、日にちが経つにつれてからだの中の広がりが増し、硬さや張りのあった部分が徐々に変化していくからです。

ロルフィングの基礎10シリーズ

ロルフィング®を創始したアイダ・ロルフ博士は、10回のセッションで構成される10シリーズ(テンシリーズ)を基本のやり方として生み出しました。

1〜3回目までの表層のセッションでからだの外側を、4〜7回目の深層のセッションで内側の筋膜にアプローチしていき、8〜10回のセッションで内側と外側、右側と左側、上半身と下半身のバランスをとり、統合していきます。

理想的なからだの状態を作っていくために、効率的なシステムとしてロルフィングの基礎になっています。

10シリーズでは、1〜2週間に1度の頻度でセッションをしていくことが理想とされています。セッション後の変化を日常の中で感じながら定期的に新しい刺激を入れることで、からだの姿勢や動き方が新しく書き換わっていくプロセスを経験していただきます。

10シリーズを経験している人は、からだの理想的な状態を何となく分かってくることが多いです。

ロルフィングの紹介動画

ヨーロッパのロルファーが作成したロルフィングのドキュメンタリー動画です。体験者の声やロルファーの考えを感じることができる貴重なものです。

ロルフィングの体験談一覧はこちら

10シリーズの内容

表層セッション

セッション1

自由な呼吸ができるようにしていきます。肋骨周りの筋膜を緩めること、そして肩周りの緊張を軽減させていくことで、より快適な呼吸を促します。そして、骨盤周りや股関節にもアプローチしていくことで、下半身の安定性を手助けします。
胸式呼吸と腹式呼吸、という考え方がありますが、前者は肋骨や肩周り、後者は骨盤周りが自由になることで、いずれの呼吸も行いやすくなるでしょう。

セッション2

足部を整えていきます。足首や足指の曲げ伸ばし、すねの前面、足首周りの組織、かかとの内側と外側のバランス、などにアプローチし、足部が股関節からまっすぐになっていきます。そうすることで脚全体が広がって伸びていきます。
かかとが地面方向に伸びていくと、からだ全体も伸びることができます。ベンチ(椅子)を使ったアプローチにより、体幹や腰の長さが生み出されます。

セッション3

表層筋膜を緩めていきます。からだを前と後ろに分ける側面のラインにアプローチし、肩周りの前後バランスを取っていきます。腕が水平方向に広がり、肩甲骨が伸びていきやすくなり、体幹周りの筋膜バランスがより整います。
そして、背骨周りの筋肉や、深層につながる腰方形筋ににも側面からアプローチしていきます。4〜6回目のセッションの下準備です。

深層セッション

セッション4

10シリーズの中核となるコア(深層)セッションの第一歩になります。骨盤を水平にしていくために大腿の内側にある内転筋にアプローチしていき、骨盤から膝が自由に動けるようにしていきます。
内転筋が解放されると、骨盤から伸びていくように膝が動けるので、骨盤の前が自由になります。セッション5で扱う腸腰筋や腰部の準備としても大事な回です。

セッション5

セッション4によって自由になった骨盤の前側には、腸腰筋という筋肉があります。そこにアプローチしていき、背骨の前側の自然な長さを作り、腰椎のバランスを整えることがこのセッションの目的です。
肋骨と腕を分けるようにからだの外側を開き、そして股関節の付け根から横隔膜に向かっている腸腰筋にアプローチしていきます。

セッション6

骨盤にある仙骨は、からだの荷重を足から支えたり、足のアーチに関係してきます。また仙骨についている筋肉は、内転筋や腸腰筋と協調して働く関係性も持っています。
このセッションでは、仙骨周りの筋肉、靭帯などにアプローチしていくことで、骨盤の水平化や地面とのつながりを促していきます。

セッション7

これまでのセッションで骨盤は水平に近づき、腰椎のバランスが整ってきました。このセッションでは、横隔膜から上の部分を、特に首と頭を自由にしていきます。
体幹の上に首が乗り、その上に頭が乗るようになると、首は自由となって頭が自然と上方向に伸ばされていきます。そのために、首の前や後ろ、喉周り、顎周り、そして鼻腔にアプローチしていきます。

統合セッション

セッション8

これまでのセッションでは、それぞれの部位を分けていくアプローチをしてきました。ここからは、全体のつながりを深めていく統合のプロセスに向かいます。8、9回目では、上半身か下半身か選び、どちらかにアプローチしていきます。
下半身の目的は、脚がコア(体幹の真ん中、腸腰筋など)とつながり、仙骨から足までの広がりがある状態を作っていくことです。

セッション9

上半身の目的は、全ての腕の動きがコアとつながっていくようにすることです。これまで様々な形で腕や胸まわりにアプローチしてきましたが、このセッションでは、肩関節、肋骨の上での肩甲帯、腕や手に対してより広い視点でアプローチし、自由な動きとバランスを引き出していきます。
背骨、肋骨、胸全体と腕に関係する背中の筋肉に働きかけていくことになります。

セッション10

セッション10では、肩甲帯と骨盤帯の二つがコアとつながっていくことを目的とします。それは、ロルフィング10シリーズの最終ゴールでもあります。
重力の中で統合されていくことが、ロルフィングの在り方です。クライアントさんの状態に合わせて、動きを教えたり、ベンチ(椅子)でのアプローチを使ったり、立った姿勢や歩行動作に働きかけていきます。