脊柱メカニクスの解説②

この記事では脊柱のメカニクスについて説明しています。脊柱(背骨)は身体の姿勢を支えてくれる大事な骨組みであり、複雑なメカニクス(仕組み)の元に成り立っています。この脊柱のメカニクスを理解することは身体を改善していく上でとても大事ですので、4回に渡って内容を要約・解説しています。今回は二回目の記事として、「制限の見つけ方」について書いていきます。前回の内容はこちらからご覧ください。

脊柱メカニクスの解説①

目次

3.制限の見つけ方

さてさて、ここからが肝心です。ここでお話しするのは、どのように制限を見つけていくか、です。細かいところは本当に細かいので省略しますが、知っておいたほうがいいことは、

  • 前屈や後屈したときに脊椎はどのように動くのか?
  • 制限があると、その動きはどのように変化するのか?

この二点です。これがイメージできていると、理解がとても早くなりますし、頚椎でも胸椎でも腰椎でも仙骨でも応用できます。(頚椎と仙骨は若干の注意が必要)

背骨は前に曲がったり後ろに反ったりすると、下記のような状態になります。左のように後屈時には前側が開いて後ろ側が閉じ、右のように前屈時には前側が閉じて後ろ側が開きます。

出典:Spinal Manipulation Made Simple ~A Manual of Soft Tissue Techniques

これが大前提として話を進めます。たとえば、下記の二つの脊椎をL3、L4だとし、右に側屈して右に回旋している状態で椎間関節に制限があるとします。いわゆるTYPE2機能不全ですね。ここで問題になるのは、右と左のどちらの関節に制限があるのか?ということです。

それを見つけるために、前屈と後屈を活用します。まずこの状態において、青い部分のL3は、①右への側屈のために上方向に、②また右回旋があるために前方向にすでにズレています。そこから前屈をすると、脊椎は後ろ側が開きますね。ですが、もし仮に右の赤の関節に制限があるとすると、左の青の関節のみが動くことになります。すでに上方向に、前方向にズレている青の部分は、さらに上方向にかつ前方向にズレるわけです。

出典:Spinal Manipulation Made Simple ~A Manual of Soft Tissue Techniques

分かりますか?ここが一番重要なので繰り返しますね。右の赤い部分は制限があって動けず、青の部分だけ前屈の動きに参加する形になります。脊椎の後ろ部分が開き、L4に対して上方向に、かつ前方向に行くのです。それはつまり、赤の部分を軸として、L3の青の部分はさらに上と前に行くことになり、結果、側屈と回旋の角度が増えるのです。

では逆に、もし左側の青部分に制限があった際は、右の赤部分のみが動きます。そして、右の赤い部分は、①右への側屈のために下方向に、②また右回旋があるために後ろ方向にすでにズレています。左の青部分は制限で動けず、下と後ろにあった右の赤い部分は、前屈の作用によって上と前方向にズレていくので、結果、側屈と回旋がなくなっていくのです。図を見ながらだと理解しやすいと思うので、上の図を参照しながら読み返してみてください。

後屈の場合も考え方は一緒です。後屈すると、椎間関節の後ろは閉じます。仮に右の赤部分に制限があるとすると、左の青部分のみが動くことができます。L3の青い部分は、①右側屈しているので上へ、②右回旋しているので前方向へズレています。赤部分は動けず、後屈の作用によって青部分は下と後ろ方向にズレていき、回旋が結果的になくなります。青部分が制限だとすると、後ろと下にあったL3部分がさらに下と後ろ方向に行くので、回旋が増えてしまいます。

4.実際に見つけてみる

このように、前屈と後屈を活用することで、どちらに制限があるのか、見極めていくことができます。セッションで何回も使ってみて脊椎の不自然さを探していくと、TYPE2の機能不全、つまり一個の脊椎だけズレていることに気づけるようになるので、そのときに上記の制限の評価を使ってみてください。

クライアントさんにまっすぐ座ってもらって脊椎を上から下までなぞった際に、単独で一つだけ変な脊椎があったら、その中央の両脇にそれぞれ指を置き、前屈したり後屈したりして回旋に変化があったら、ビンゴです。

出典:Spinal Manipulation Made Simple ~A Manual of Soft Tissue Techniques

また、両側に制限がある、もしくはどちらに制限があっても両方にアプローチすればいいではないか、といった意見もあるかもしれません。ですが、この本の中では両側制限があるのは頚椎のみで、胸椎や腰椎ではないと紹介されていました。また、両側に制限があると仮定してアプローチしても、時間の無駄になったり、もしくは健全な組織に対しても負荷が掛かったりする可能性があるので、見分けがついたほうがよさそうです。

以上のことをまとめると、下記のようになります。

後屈して回旋がなくなったら、回旋側屈と同じ側の椎間関節に制限がある。

前屈して回旋がなくなったら、回旋側屈の逆側の椎間関節に制限がある。

引用元:Spinal Manipulation Made Simple ~A Manual of Soft Tissue Techniques

右回旋右側屈で機能不全があったとき、右の横突起が後ろに出ていますね。つまり、出っ張りがあるわけです。その状態から後屈して回旋がなくなったら、回旋側屈と同じ側、つまり右の椎間関節に制限がある、と評価できるわけです。慣れるまではややこしいのですが、一度理解が深まれば大丈夫です。

ちなみに、IMAC開発者のヒロさんはこの逆で説明していました。つまり、「前屈して回旋がある(=増える)ときは、同じ側に制限がある」としていました。前屈しても、右側の出っ張りが前と上に動けないので回旋が維持、もしくは増大してしまう、というロジックになり、上記の例では右側の椎間関節が制限となるわけです。僕も個人的にはこの形で覚えています。

実際にやってみる注意点として、この本にも書いてありましたが、実際に身体を触っているときに、制限を見つける方法で説明した論理全部を考えるのは絶対にしない方がいいです。上記のように、一文ほどでまとまる文章を覚えて、それを毎回使う方が懸命でしょう。なぜかというと、やりながら考えていると本当に頭がこんがらがってしまい、クライアントさんの身体で起きている変化に集中できなくなってしまうからです。ご自身にとって覚えやすい内容を見つけ、それを使ってあとは実際に数をこなしてみてください。

この本が面白いなぁ、と思った理由として、このような論理をわかりやすく書いてくれていることが一つと、あとは実際にどのように制限を解消していくか、ということにも言及している点です。その中で、自分が興味深いと思った内容を次回のブログで少しご紹介したいと思っています。

次回ブログはこちらからです。

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この記事を書いた人

日本語と英語を操るバイリンガルロルファー。東京出身ではありますが、神戸の風土と文化、そして人の雰囲気に親しみを感じ、2016年に移住してきました。六甲山を始めとした山々と海の自然に囲まれ、お洒落なお店が立ち並ぶ神戸三宮での日常を楽しんでいます。

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